はじめに:「利益率」を正しく把握しているホテルは意外と少ない

ホテル経営者から「うちの利益率って普通ですか?」と聞かれることが、コンサルティングの現場で最も多い質問の一つです。しかし、まずダッシュボードを開いて確認すると、売上と経費のざっくりした差額は分かっていても、部門別の収益構造やGOP(Gross Operating Profit:総営業利益)を正確に把握している施設は、私の支援先でも3割に満たないのが実情です。

利益率の改善は、単に「コストを削る」「売上を上げる」という二択ではありません。GOP(総営業利益)というフレームワークで収益構造を分解し、どこにレバーがあるのかをデータで特定することが出発点になります。

本記事では、ホテル・旅館の利益率の計算方法、業態別の平均値、そしてGOP改善に直結する具体的な打ち手を5つ紹介します。私が外資系ホテルチェーンで12施設のレベニューマネジメントを統括し、独立後に中小規模の旅館・ホテルを支援してきた経験から、数字に基づいた実践的なアクションをお伝えします。

GOP(総営業利益)とは:ホテル利益率の正しい測り方

GOPの定義と計算式

GOP(Gross Operating Profit)は、ホテルの営業活動から生み出される利益を示す指標で、国際的なホテル会計基準であるUSALI(Uniform System of Accounts for the Lodging Industry)に準拠した計算方法が標準です。

計算式は以下の通りです。

項目内容
総売上宿泊売上 + 料飲売上 + 宴会売上 + その他売上(スパ、駐車場等)
部門別直接費各部門の人件費 + 原材料費 + 直接経費
配賦不能営業費管理部門費 + マーケティング費 + 水光熱費 + 修繕費
GOP総売上 − 部門別直接費 − 配賦不能営業費
GOP率GOP ÷ 総売上 × 100(%)

ここで重要なのは、GOPには減価償却費、支払利息、法人税、賃料が含まれないという点です。これらはオーナー側のコストであり、ホテル運営の効率性を純粋に測るためにGOPから除外されます。つまり、GOPは「運営チームがコントロールできる利益」を測る指標です。

GOPと営業利益・経常利益の違い

日本のホテル経営者が混同しがちなのが、GOPと一般的な損益計算書(P/L)上の営業利益・経常利益との違いです。

指標含まない費用用途
GOP減価償却、支払利息、法人税、賃料運営効率の評価・ベンチマーク
営業利益支払利息、法人税事業全体の収益性評価
経常利益法人税、特別損益経営活動全体の収益性評価

GOPの優位性は、施設間の比較が可能な点にあります。所有形態(自社所有・賃貸・MC契約)や借入条件が異なる施設同士でも、運営の効率性をフェアに比較できます。私がRM(レベニューマネジメント)のレビューで必ずGOPを使うのは、まさにこの理由です。

業態別・規模別のGOP率平均値

「自社のGOP率が高いのか低いのか」を判断するには、ベンチマークとなる業態別の平均値が不可欠です。以下は、業界各種調査データと私のコンサルティング実績を基にした目安です。

業態別GOP率の目安

業態GOP率の目安特徴
ビジネスホテル30〜40%料飲部門が小さく人件費率が低い。客室売上比率が高く構造がシンプル
シティホテル35〜45%料飲・宴会収入で売上規模が大きい。ただし部門別人件費も高い
リゾートホテル25〜35%季節変動が大きく閑散期の固定費負担が重い。水光熱費も高め
旅館(20〜50室)15〜25%料理提供の人件費・原材料費が重く、料飲原価率40〜50%が課題
旅館(50室以上)20〜30%規模のメリットで原価率を下げやすい。ただし人件費率は依然高い

数字で見ると、ビジネスホテルのGOP率が高い理由は明確です。宿泊部門の売上構成比が85〜95%と高く、料飲部門の人件費・原材料費という「重い」コストがほとんどかからないからです。一方、旅館はおもてなしの提供に伴う人件費率が35〜45%に達し、GOP率を構造的に押し下げます。

規模別のコスト構造比較

同じ業態でも、規模によってコスト構造は大きく変わります。

コスト項目小規模(30室以下)中規模(30〜80室)大規模(80室以上)
人件費率30〜40%28〜35%25〜32%
水光熱費率8〜12%6〜10%5〜8%
OTA手数料率10〜15%8〜12%5〜10%
修繕費率3〜5%3〜5%2〜4%
管理部門費率8〜12%6〜10%5〜8%

小規模施設ほどGOP率が低くなりやすい理由は、固定費の分散効率が悪いことに加え、OTA依存度が高く手数料負担が重いことが挙げられます。実績として、私が支援した客室28室の温泉旅館では、OTA比率95%の状態でOTA手数料だけで売上の約14%が消えていました。これをチャネルミックスの見直しで70%まで下げた結果、手数料率が実質10%→7%に下がり、GOP率が3ポイント改善しました。

GOP率が低い施設に共通する5つの構造的問題

GOP率が業態平均を下回っている施設には、共通するパターンがあります。改善策を考える前に、まず自社の課題を正しく特定することが重要です。

問題1:人件費が「聖域」になっている

人件費率が業態平均を5ポイント以上上回っている場合、シフト設計や業務フローに無駄がある可能性が高いです。特に多いのが、需要に関係なく同じ人数で回しているパターンです。稼働率50%の平日と95%の週末で同じスタッフ数を配置していれば、平日の人時生産性(売上÷総労働時間)は半分以下になります。

問題2:料飲部門が「赤字」を垂れ流している

旅館や料飲部門を持つシティホテルで頻出する問題です。食材原価率が50%を超え、さらに調理スタッフの人件費を乗せると料飲部門単体では赤字——にもかかわらず、「うちは料理が売りだから」という理由で放置されているケースを何度も見てきました。料飲部門は独立したプロフィットセンターとして管理すべきであり、ホテルレストランの売上改善戦略を参考に部門別P/Lを作成することを強くお勧めします。

問題3:OTA手数料が利益を侵食している

OTA経由の予約比率が80%を超える施設では、売上が上がってもGOP率が一向に改善しないという症状が出ます。主要OTAの手数料率は8〜15%です。仮にADR(平均客室単価)が10,000円で手数料率12%なら、1予約あたり1,200円がコストとして消えます。年間10,000泊の施設であれば年間1,200万円のインパクトです。

問題4:水光熱費のコントロールが甘い

水光熱費は売上の5〜12%を占めますが、多くの施設で「電気代が高い」と感覚的に把握するだけで、デマンド値の管理やエネルギー効率の改善に取り組んでいません。特に温泉旅館ではボイラーのエネルギーコストが大きく、GOP率を2〜3ポイント押し下げている施設も珍しくありません。

問題5:ADRが「相場任せ」で最適化されていない

利益率改善の議論で見落とされがちなのが、売上単価の最適化です。コスト構造が同じでも、ADRが5%上がればGOP率は大きく改善します。しかし、多くの施設では年間を通じて料金を固定するか、せいぜい繁忙期・閑散期の2段階設定にとどまっています。需要に応じた価格設定(ダイナミックプライシング)を導入するだけで、ADR+10〜20%の改善事例は珍しくありません。

GOP改善の具体的アクション5つ

ここからは、GOP率を実際に改善するための具体的な打ち手を5つ紹介します。いずれも私のコンサルティング現場で効果が検証されたアクションです。重要なのは、すべてを同時にやろうとしないこと。1つずつ着手し、4週間で効果を検証しながら進めるのが鉄則です。

アクション1:ダイナミックプライシングでADRを最適化する

GOP改善の最も即効性が高いレバーは、ADR(平均客室単価)の引き上げです。コスト構造を変えずに売上だけ増やせるため、増分がそのままGOPに乗ります。

具体的なステップは以下の通りです。

  1. 競合料金の日次モニタリング:同エリアの競合5施設の料金を毎朝チェックし、自社のポジションを把握する。私自身、朝5時半に起きて6時半までに競合5社の料金チェックを済ませるのが日課です。このデータが価格判断の土台になります
  2. 曜日別・シーズン別の料金テーブル作成:過去12ヶ月の稼働率データから需要パターンを読み取り、最低でも7段階の料金レベルを設定する
  3. 小さく始めてデータで検証:全室一気に値上げするのではなく、特定の客室タイプ・曜日に限定してテスト。キャンセル率と予約数の変動を4週間追跡する

実績として、私が支援した客室28室の老舗旅館では、「値上げしたら客が逃げる」と社長が3回提案を拒否していました。そこで、土曜日のみ・スタンダード客室のみ・1,500円だけ上げるA/Bテストを1ヶ月実施。社長同席で日次キャンセル率を確認した結果、キャンセル率は変わらず、平均単価+1,500円が純増し、RevPAR+12%を達成しました。社長からは「全曜日で検討したい」と逆に提案を受けたほどです。

ダイナミックプライシングの導入手順については、RevPARを最大化するダイナミックプライシング導入ガイドで詳しく解説しています。

アクション2:人件費率を「需要連動型」に再設計する

人件費はGOPに対する最大のコストドライバーであり、GOP率改善のインパクトが最も大きい項目です。ただし、ここで言う「人件費削減」は単なるリストラではありません。需要に応じた人員配置の最適化が本質です。

具体的な施策は以下の3つです。

施策内容GOP率への効果
需要連動シフト翌週の予約状況に基づき、曜日別のスタッフ人数を調整。稼働率50%以下の日は最小人数で運営人件費率 ▲2〜4pt
マルチタスク化フロント×朝食サービス、ハウスキーピング×ランドリーなど、部門横断の兼任体制を構築人件費率 ▲1〜3pt
セルフチェックイン導入チェックイン業務を自動化し、フロントの深夜シフトを削減または廃止人件費率 ▲2〜5pt

これらを組み合わせることで、人件費率を5〜8ポイント改善することは十分に現実的です。ホテル経費削減の実践ガイドでは、人件費を含むコスト最適化の手法をさらに詳しく紹介しています。

アクション3:OTA手数料を構造的に圧縮する

OTA手数料の圧縮は、売上を減らさずにコストだけを下げる、GOP改善の「おいしい」施策です。ポイントは、OTAをやめるのではなく、チャネルミックスを再設計することです。

私の経験では、OTA依存度を下げるための優先順位は以下の通りです。

  1. 公式サイトの予約導線を改善する:ベストレート保証の明示、予約フォームのステップ数削減、スマートフォン対応の徹底
  2. LINE公式アカウントでリピーターを囲い込む:チェックアウト時にLINE登録を促し、次回予約は公式サイトへ誘導
  3. 法人直契約を増やす:近隣企業への営業で法人契約を獲得。OTA手数料ゼロで安定した稼働を確保

ある月にOTA専業(OTA比率95%)のホテルで、OTAのアルゴリズム変更により検索順位が一晩で30位下落し、月間予約が40%減少した事例を目の当たりにしました。このリスクを経営者に伝えるために、過去5年の業界事例8件を並べた事故レポートを作成。直販サイト+LINE公式強化の6ヶ月ロードマップを提示した結果、OTA比率95%→70%、直販+15%、LINE公式+10%に改善。次のOTAアルゴリズム変更時の影響は1/3に軽減されました。

GOP率への影響を試算してみましょう。

指標改善前改善後差分
OTA比率85%60%▲25pt
直販比率5%25%+20pt
実質手数料率11.5%7.2%▲4.3pt
年間手数料削減額(年商8,000万円の場合)920万円576万円▲344万円

手数料率が4.3ポイント下がるだけで、年間344万円がGOPに直接加算されます。年商8,000万円の施設であれば、GOP率+4.3ポイントの改善に相当する計算です。

アクション4:料飲部門のP/Lを独立管理する

旅館やフルサービスホテルにとって、料飲部門のコスト管理はGOP改善の最大の焦点です。具体的には、以下のKPIを月次で追跡します。

KPI目標値管理ポイント
食材原価率30〜38%メニューエンジニアリングで高原価品の提供方法を見直し
人件費率25〜30%調理工程の外注化(チルドパック活用)で削減
FL比率55〜65%Food+Laborの合計。65%超は赤字ライン
売上高前年比+5%以上ライブクッキングや地元食材コラボで単価UP

私が支援した42室のビジネスホテルでは、朝食部門が年間84万円の赤字でした。食材原価率58%、人件費率35%という構造的な赤字です。メニューエンジニアリングで高原価品5品の提供方法を変更し、地元農家との直接仕入れ開始、和惣菜4品をチルドパック外注に切替、ライブクッキング(出汁巻き卵・焼きたてパン)を強化した結果、6ヶ月後に食材原価率58%→42%、人件費率35%→26%に改善。朝食部門は月+30万円の黒字に転換し、年間+360万円の改善を達成しました。しかも口コミスコアは4.0→4.3に上昇。コスト削減と顧客満足は両立できるのです。

アクション5:水光熱費をデータで最適化する

水光熱費はGOPに対する影響度が人件費に次いで大きく、かつ比較的短期間で効果が出る領域です。施策の優先順位は以下の通りです。

施策初期投資年間削減額の目安回収期間
新電力への切替0円電気代の5〜15%即時
LED照明への全館交換50〜150万円照明電力の50〜70%1〜2年
デマンドコントローラー導入30〜80万円基本料金の10〜20%6ヶ月〜1年
節水シャワーヘッド交換客室数×3,000〜5,000円水道代の15〜25%3〜6ヶ月
EMS(エネルギー管理システム)導入100〜300万円総エネルギーの10〜20%1〜3年

実績として、私が支援した50室規模の旅館ではデマンドコントローラーを導入し、ゲストの快適性を損なわない範囲で空調の輪番停止(1台あたり10〜15分)を設定しました。結果、契約電力が85kWから68kWに低下し、基本料金が年間72万円削減。空調に関するクレームは1件も発生しませんでした。10〜15分の短時間であればゲストは気づかないのです。

これらの施策を組み合わせると、水光熱費を総額で20〜30%削減することが可能です。売上比率で言えば、GOP率を1.5〜3ポイント改善できる計算になります。

GOP改善の効果シミュレーション

5つのアクションを組み合わせた場合、GOPがどの程度改善するかをシミュレーションしてみましょう。モデルケースとして、客室40室・年商8,000万円のビジネスホテルを想定します。

アクションGOP率への効果年間金額インパクト
① ADR最適化(ダイナミックプライシング)+3〜5pt+240〜400万円
② 人件費率の需要連動化+3〜5pt+240〜400万円
③ OTA手数料の構造的圧縮+2〜4pt+160〜320万円
④ 料飲部門P/Lの独立管理+1〜3pt+80〜240万円
⑤ 水光熱費のデータ最適化+1.5〜3pt+120〜240万円
合計(重複効果控除後)+8〜15pt+640〜1,200万円

GOP率が30%の施設が、5つのアクションで38〜45%まで改善する——これは理論値ではなく、私がコンサルティングで実際に目にしてきた改善幅です。もちろん、すべてを同時に実行する必要はありません。まずは最もインパクトが大きく、着手しやすいアクションから始め、4週間で効果を検証しながら次の施策に進む。この積み上げがGOP改善の王道です。

GOP改善を加速する管理会計の仕組み

GOPを継続的に改善するためには、月次で数字を追跡する仕組みが欠かせません。私がコンサルティング先に必ず導入するのが、以下の3つのダッシュボードです。

1. 月次GOPダッシュボード

追跡すべきKPIは以下の通りです。

  • GOP率:前月比・前年同月比で推移を確認
  • RevPAR:ADR × OCC(稼働率)の分解で課題を特定
  • 人件費率:部門別に追跡。特にフロント・料飲・ハウスキーピングの3部門
  • OTA手数料率:チャネル別の構成比と手数料の実額を毎月確認
  • 水光熱費率:前年同月比で異常値を検出

2. 部門別P/Lレポート

宿泊部門・料飲部門・宴会部門・その他部門ごとに、売上・直接費・部門利益を算出します。特に料飲部門が赤字なのか黒字なのかを正確に把握することが、GOP改善の方向性を決めます。

3. 日次レベニューレポート

翌日以降の予約状況(OTB:On The Books)を日次で確認し、需要に応じた料金調整とスタッフ配置を先手で打つ。このレポートがあれば、「先週の稼働率が低かった」という事後対応ではなく、「来週水曜の予約が弱いから料金を調整する」という先手の打ち手が可能になります。

ホテル売上アップの実践ガイドでは、RevPAR改善を中心とした売上側のKPI管理についてさらに掘り下げています。合わせてお読みいただくことで、売上とコストの両面からGOP改善に取り組む全体像が見えてくるはずです。

GOP改善の優先順位の決め方

5つのアクションのうち、自社でどれから着手すべきかを判断するフレームワークを紹介します。

ステップ1:現状のGOPを正確に算出する

まず、直近12ヶ月のP/Lデータからgop率を算出します。月次で算出することが重要です。年間平均だけでは季節変動に隠れた課題が見えません。

ステップ2:業態平均とのギャップを特定する

本記事で示した業態別平均値と比較し、自社のGOP率がどの位置にあるかを確認します。平均を下回っている場合、コスト構造のどの項目が押し下げ要因になっているかを特定します。

ステップ3:「インパクト × 難易度」マトリクスで優先順位を決める

実行が容易実行にやや手間がかかる
GOPへの効果が大きい① ADR最適化
③ OTA手数料圧縮
② 人件費率の再設計
GOPへの効果が中程度⑤ 水光熱費最適化④ 料飲部門P/L管理

まずは「効果が大きく、実行が容易」な左上の象限から着手するのが定石です。ADRの最適化とOTA手数料の圧縮は、大きな設備投資を伴わずにGOP率を5〜9ポイント改善できる可能性があります。

よくある失敗パターンと回避策

最後に、GOP改善に取り組む際に陥りがちな失敗パターンを3つ紹介します。

失敗1:コスト削減「だけ」に走る

利益率を上げたいときに真っ先に思いつくのがコスト削減ですが、サービス品質を損なう削減は口コミスコアの低下を通じてADRとOCCの両方を悪化させます。GOP改善は「売上のレバー」と「コストのレバー」の両方を使うことが大前提です。

失敗2:全施策を同時に着手する

5つのアクションを一度に始めると、どの施策が効いたのか分からなくなります。1つの施策を4週間運用し、効果を数字で確認してから次に進む。この逐次検証が成功の鍵です。

失敗3:月次レビューをしない

施策を始めたのに月次でKPIを追跡しなければ、改善が進んでいるのか後退しているのか分かりません。私のコンサルティングでは、月末に現地ホテルに2泊してRMレビューを行い、翌月のアクションを調整しています。このPDCAサイクルがなければ、どんな優れた施策も効果が持続しません。

まとめ:GOP改善は「仕組み」で継続する

ホテルの利益率改善は、一発の施策で劇的に変わるものではありません。GOPという共通言語でコスト構造を可視化し、5つのアクションを優先順位をつけて実行し、月次で効果を検証する——この仕組みを作ることが、持続的な収益体質の強化につながります。

数字で見ると、GOP率が10ポイント改善すれば、年商8,000万円の施設で年間800万円の利益増です。この800万円があれば、スタッフの処遇改善、設備のリニューアル、直販チャネルへの投資など、次の成長に向けた原資が生まれます。

まずは自社のGOP率を正確に算出するところから始めてみてください。「利益率は普通ですか?」という問いに、数字で答えられる状態を作ること。それがGOP改善の第一歩です。

よくある質問(FAQ)

Q. GOPとNOI(純営業利益)の違いは何ですか?

A. GOPは総売上から部門直接費と配賦不能営業費を引いた「運営レベルの利益」です。NOI(Net Operating Income)はGOPからさらにFF&Eリザーブ(家具・備品の更新積立金、通常売上の3〜5%)を引いたもので、不動産投資の評価に使われます。日常の運営効率を見るならGOP、投資判断にはNOIが適しています。

Q. 小規模旅館(20室以下)でもGOP管理は必要ですか?

A. 必要です。むしろ小規模施設ほど、1室あたりの固定費負担が大きくGOP率が低くなりやすいため、数字の管理が重要です。まずは月次P/Lを作成し、人件費率・食材原価率・OTA手数料率の3つを追跡するところから始めてください。ExcelやGoogleスプレッドシートで十分です。

Q. GOP率の改善目標はどのくらいに設定すべきですか?

A. まずは業態平均を目標にしてください。ビジネスホテルなら35%、シティホテルなら40%、旅館なら20%が第一目標です。既に平均以上であれば、年間2〜3ポイントの改善を目標とするのが現実的です。急激な改善を目指すとサービス品質を犠牲にするリスクがあります。

Q. PMS(宿泊管理システム)を使っていなくてもGOP管理はできますか?

A. 可能ですが、データの正確性と集計の効率に大きな差が出ます。PMSなしの場合、日次の売上・稼働率データを手作業で集計する必要があり、月次レポートの作成に数日かかることもあります。クラウド型PMSを導入すれば、データの自動集計でレポート作成が翌日に完了し、RMレビューのスピードが格段に上がります。

Q. GOP改善の効果が出るまでどのくらいかかりますか?

A. 施策によって異なります。ADRの最適化やOTA手数料の圧縮は1〜3ヶ月で効果が見え始めます。人件費率の再設計は3〜6ヶ月、料飲部門の構造改革は6ヶ月〜1年が目安です。重要なのは、4週間ごとに効果を検証し、数字の動きを確認しながら進めることです。