愛犬との旅行が当たり前の時代に——ペットツーリズム最前線

「愛犬と一緒に温泉旅行がしたい」——そんな声が年々高まっています。矢野経済研究所の調査によると、2026年の国内ペット関連市場は2兆円規模に到達する見込み。なかでもペットツーリズムは成長著しく、グローバルではペットフレンドリーホテル市場がCAGR 12.3%で拡大しています。

愛犬家のうち「旅行にペットを同伴したい」と回答した割合は70%以上。一方で、ペットと泊まれる宿はまだ限られており、需要に対して供給が追いついていないのが現状です。実際に取材をしていても、「予約が3カ月先まで埋まっている」という施設は珍しくありません。

今回は、年間100泊以上の宿泊取材を行う私が、全国のペットと泊まれる宿のなかから本当におすすめできる15施設を厳選しました。ドッグラン併設、部屋食対応、大型犬OK、温泉付きなど、条件別に整理していますので、愛犬との次の旅行計画にぜひお役立てください。

なお、ペット同伴旅行者のADR(平均客室単価)は一般旅行者より20〜30%高い傾向にあります。施設経営者の方にとっても、ペットフレンドリー化は収益向上の有力な選択肢です。集客全般のヒントは旅館・ホテルの集客戦略6選もあわせてご覧ください。

ペットと泊まれる宿を選ぶ5つのポイント

まずは宿選びで押さえておきたいチェックポイントを整理します。愛犬のサイズや性格、旅のスタイルによって最適な宿は変わりますので、以下を参考に優先順位をつけてみてください。

1. 受け入れ可能なペットのサイズ・頭数

「小型犬のみ」「中型犬まで」「大型犬・超大型犬OK」など、施設によってルールが異なります。大型犬オーナーは特に事前確認が必須です。多頭飼いの場合も、2頭目以降は追加料金が発生するケースが多いので注意しましょう。

2. ドッグラン・プレイエリアの有無

長距離移動の後、愛犬が自由に走り回れるドッグランがあると安心です。プライベートドッグラン付きの客室なら、他のワンちゃんが苦手な子でもストレスなく過ごせます。

3. 食事スタイル(部屋食 or レストラン同伴可)

部屋食なら愛犬と離れる必要がなく、飼い主もリラックスして食事を楽しめます。最近はレストランへの同伴を認める施設も増えていますが、ドッグメニューの有無もチェックポイントです。

4. 温泉・客室風呂の充実度

せっかくの温泉旅行なら、お湯の質にもこだわりたいところ。客室に温泉風呂が付いていれば、愛犬を部屋に残して大浴場へ行く時間を最小限にできます。露天風呂付き客室のおすすめ旅館20選もあわせて参考にしてみてください。

5. アメニティ・設備の充実度

ペットシーツ、ケージ、フードボウル、消臭スプレー、足洗い場など、備品が充実している宿ほど荷物を減らせます。ペット用の温泉やグルーミングルームを備えた施設もあります。

【ドッグラン併設】おすすめ5選

まずは、愛犬が思いきり走り回れるドッグランを備えた施設をご紹介します。

1. エンゼルフォレスト白河高原(福島県・羽鳥湖高原)

実際に訪れると、その敷地の広さにまず驚きます。約50万坪の大自然のなかに、温泉露天風呂付きコテージが点在。ノーリードで遊べるドッグフリーサイトは圧巻で、愛犬が水遊びできる湖畔エリアもあります。

  • 受入可能:大型犬OK・多頭OK
  • ドッグラン:屋外フリーラン+湖畔エリア
  • 温泉:天然温泉露天風呂付きコテージ
  • 料金目安:1泊2食 15,000円〜/人

2. ドッグリゾート モリトソラ箱根(神奈川県・強羅温泉)

2024年にオープンした新しいペットリゾート。全室に強羅温泉の源泉かけ流し風呂とプライベートドッグランが付いています。箱根の自然に囲まれたヴィラタイプで、お湯に浸かった瞬間「ここに住みたい」と思わせる贅沢さ。箱根エリアの温泉宿をお探しなら箱根温泉旅館おすすめ20選も参考にどうぞ。

  • 受入可能:中型犬まで・2頭まで
  • ドッグラン:全室プライベートドッグラン付き
  • 温泉:全室源泉かけ流し(強羅温泉)
  • 料金目安:1泊2食 35,000円〜/人

3. レジーナリゾート箱根仙石原(神奈川県・仙石原温泉)

全室ペット同伴OKのリゾートホテル。館内に3つのドッグラン(小型犬用・中大型犬用・プライベート)を完備。朝夕食とも部屋食で、愛犬とのんびり過ごせます。犬種・サイズの制限がないのも嬉しいポイントです。

  • 受入可能:全犬種OK・サイズ制限なし・2頭まで
  • ドッグラン:3面(サイズ別+プライベート)
  • 温泉:仙石原温泉(大浴場・客室風呂)
  • 料金目安:1泊2食 30,000円〜/人

4. 伊豆マリオットホテル修善寺(静岡県・修善寺温泉)

マリオット系列のなかでも珍しいペット同伴可能ホテル。ドッグラン付きのドッグフレンドリールームがあり、修善寺温泉の大浴場も楽しめます。マリオットBonvoyポイントが貯まるのも魅力。

  • 受入可能:小型犬のみ・1頭まで
  • ドッグラン:屋外ドッグラン併設
  • 温泉:修善寺温泉(大浴場)
  • 料金目安:1泊朝食付き 25,000円〜/人

5. ルシアン旧軽井沢(長野県・軽井沢)

軽井沢の森のなかに佇むオーベルジュ。広大な天然芝のドッグランは開放感抜群で、取材時も愛犬たちが嬉しそうに駆け回っていました。フレンチベースのディナーは犬用コースも用意されており、食事の時間まで一緒に楽しめます。

  • 受入可能:大型犬OK・多頭OK
  • ドッグラン:天然芝の広大なフリーラン
  • 温泉:なし(大浴場あり)
  • 料金目安:1泊2食 28,000円〜/人

【部屋食・レストラン同伴可】おすすめ5選

食事中も愛犬と一緒にいたい——そんなオーナーにぴったりの宿を集めました。

6. 松の浦別邸(滋賀県・おごと温泉)

琵琶湖畔に佇む全室レイクビューの温泉リゾート。ダイニングルームへのペット同伴が可能で、目の前に琵琶湖が広がる開放感のなか、近江牛や地元食材を活かした会席料理をいただけます。大型犬用・小型犬用のドッグランも完備。

  • 受入可能:大型犬OK・2頭まで
  • 食事:レストラン同伴可+犬用メニューあり
  • 温泉:おごと温泉(客室温泉風呂付き)
  • 料金目安:1泊2食 40,000円〜/人

7. わんわんパラダイス 伊豆高原(静岡県・伊豆高原)

ペット同伴宿の老舗的存在。部屋食プランが充実しており、伊豆の新鮮な海の幸を愛犬のそばで楽しめます。超大型犬まで宿泊OKなのは全国でも貴重。屋内・屋外のドッグランも充実しています。

  • 受入可能:超大型犬OK・多頭OK
  • 食事:部屋食プランあり
  • 温泉:伊豆高原温泉(大浴場・露天風呂)
  • 料金目安:1泊2食 13,000円〜/人

8. レジーナリゾート旧軽井沢(長野県・軽井沢)

犬種・サイズの制限なし、追加料金なしでペット同伴できる高級リゾート。レストランは全席ペット同伴可。愛犬用のコースメニューも用意されており、記念日旅行にもぴったりです。

  • 受入可能:全犬種OK・サイズ制限なし・2頭まで無料
  • 食事:レストラン全席同伴可+犬用コースメニュー
  • 温泉:なし(大浴場あり)
  • 料金目安:1泊2食 35,000円〜/人

9. 愛犬お宿 伊豆高原プチホテル(静岡県・伊豆高原)

全6室のアットホームな小規模ホテル。食事はダイニングに愛犬同伴でき、オーナーシェフが手がける洋食コースは地元食材をふんだんに使った本格派。ペット用のケーキ予約もでき、愛犬の誕生日利用も多いそうです。

  • 受入可能:中型犬まで・2頭まで
  • 食事:ダイニング同伴可+犬用ケーキ対応
  • 温泉:なし(貸切風呂あり)
  • 料金目安:1泊2食 16,000円〜/人

10. わん泊亭(岐阜県・下呂温泉)

日本三名泉のひとつ、下呂温泉でペットと泊まれる貴重な宿。部屋食で飛騨牛をメインにした会席料理を堪能できます。超大型犬まで受け入れOKで、温泉街の散歩も楽しめるロケーションが魅力です。全国温泉地おすすめランキング30選でも下呂温泉は上位に入る名湯です。

  • 受入可能:超大型犬OK・多頭OK
  • 食事:部屋食(飛騨牛会席)
  • 温泉:下呂温泉(大浴場・貸切風呂)
  • 料金目安:1泊2食 12,500円〜/人

【大型犬OK・高級リゾート】おすすめ5選

大型犬と一緒にラグジュアリーな時間を過ごしたい方に向けて、ワンランク上のリゾートを厳選しました。

11. ふふ 河口湖(山梨県・河口湖)

富士山を望むラグジュアリーリゾート「ふふ」のペット対応施設。全室スイート仕様で、ドッグフレンドリールームには専用テラスとドッグガーデンが付いています。温泉は自家源泉で、客室の露天風呂から富士山を眺める贅沢は格別です。

  • 受入可能:中型犬まで・2頭まで
  • 設備:専用テラス+ドッグガーデン
  • 温泉:自家源泉(全室露天風呂付き)
  • 料金目安:1泊2食 50,000円〜/人

12. 星のや軽井沢(長野県・軽井沢)

星野リゾートが展開するペットプログラム「ペットルーム」で愛犬と滞在可能。谷の集落をイメージした非日常空間で、愛犬と森の散歩を楽しめます。ペット用のアメニティが充実しており、初めてのペット旅行にも安心です。

  • 受入可能:小〜中型犬(体重20kgまで)・1頭まで
  • 設備:専用ペットルーム+森の散歩道
  • 温泉:星野温泉トンボの湯
  • 料金目安:1泊 45,000円〜/人(食事別)

13. 大月ホテル和風館(静岡県・熱海温泉)

熱海の老舗旅館でありながら、ペット同伴プランを導入している先進的な施設。大型犬まで受け入れ可能で、源泉かけ流しの温泉が自慢です。和の趣を残しつつペットとの共存を実現した好例で、施設経営のヒントとしても注目されています。

  • 受入可能:大型犬OK・2頭まで
  • 設備:ペット専用フロア
  • 温泉:熱海温泉(源泉かけ流し)
  • 料金目安:1泊2食 25,000円〜/人

14. 愛犬と泊まれるリゾートホテル ウブドの森 伊豆高原(静岡県)

バリ島をイメージしたアジアンリゾート。全室ペットOKで、大型犬も受け入れ可能です。屋外にはドッグラン、館内にはペット用の温泉まで完備。お湯に浸かった瞬間、ワンちゃんもリラックスした表情になるのが印象的でした。

  • 受入可能:大型犬OK・多頭OK
  • 設備:ドッグラン+ペット用温泉+グルーミングルーム
  • 温泉:伊豆高原温泉(大浴場・客室風呂)
  • 料金目安:1泊2食 20,000円〜/人

15. きたの風茶寮(北海道・ニセコ)

北海道の大自然を満喫できるペット同伴可の温泉旅館。全12室の小規模ならではの行き届いたサービスが魅力です。ニセコの清流を眺めながらの露天風呂、地元の山海の幸を活かした懐石料理——そのどちらも一級品。冬はパウダースノーのゲレンデへのアクセスも良好です。

  • 受入可能:中型犬まで・1頭まで
  • 設備:ペット専用客室+足洗い場
  • 温泉:ニセコ温泉(源泉かけ流し露天風呂)
  • 料金目安:1泊2食 38,000円〜/人

比較表:15施設の特徴まとめ

施設名エリア大型犬ドッグラン部屋食温泉料金目安
エンゼルフォレスト白河高原福島×15,000円〜
モリトソラ箱根神奈川××35,000円〜
レジーナリゾート箱根仙石原神奈川30,000円〜
伊豆マリオットホテル修善寺静岡××25,000円〜
ルシアン旧軽井沢長野××28,000円〜
松の浦別邸滋賀×40,000円〜
わんわんパラダイス 伊豆高原静岡13,000円〜
レジーナリゾート旧軽井沢長野××35,000円〜
愛犬お宿 伊豆高原プチホテル静岡××××16,000円〜
わん泊亭岐阜×12,500円〜
ふふ 河口湖山梨××50,000円〜
星のや軽井沢長野×××45,000円〜
大月ホテル和風館静岡××25,000円〜
ウブドの森 伊豆高原静岡×20,000円〜
きたの風茶寮北海道×××38,000円〜

施設経営者が知っておきたいペットフレンドリー化のポイント

ここからは、施設経営者・マネージャー向けに、ペット受け入れを検討する際の実務的なポイントを解説します。

客単価アップの効果

ペット同伴旅行者は一般旅行者に比べて客室単価が20〜30%高いデータがあります。さらに、ペット用アメニティ、ドッグメニュー、記念日オプションなどの付帯売上も期待できます。平日稼働率の向上にも貢献するのが特徴で、ペットオーナーは混雑を避けて平日に旅行する傾向があります。

導入に必要な設備投資

最低限必要なのは、ペット専用フロアまたは客室の設定足洗い場の設置消臭・清掃体制の強化の3点です。ドッグランの整備は敷地に余裕がある施設向けですが、プライベートガーデン付き客室への改装も効果的です。

初期投資を抑えたい場合は、まず1〜2室をペット対応に改装し、需要を確認してから拡大する段階的アプローチがおすすめです。2026年度はIT導入補助金などの活用も検討できます。補助金の詳細はデジタル・AI補助金2026年ガイドを参照してください。

衛生管理とトラブル対策

ペット受け入れで最も気になるのが衛生面です。以下のルールを宿泊約款に明記し、予約時に同意を得る運用が一般的です。

  • 狂犬病・混合ワクチンの接種証明書の提示
  • ノミ・ダニ予防済みであること
  • 館内での排泄事故時の原状回復費用(清掃費として3,000〜10,000円)
  • ペットの客室内での留守番ルール(ケージ使用等)

OTAでの露出とマーケティング

じゃらん、楽天トラベル、一休.comなどの主要OTAには「ペット可」フィルターがあり、ここに表示されるだけで新規流入が期待できます。専門予約サイト「いぬやど」への掲載も効果的です。SNSマーケティングでは、宿泊したゲストの愛犬写真のUGC(ユーザー生成コンテンツ)が強力な集客ツールになります。

愛犬との温泉旅行を成功させるコツ

最後に、飼い主さん向けの旅行Tips をまとめます。

持ち物チェックリスト

  • ワクチン接種証明書(必須)
  • 普段食べているフード・おやつ
  • リード・ハーネス・首輪(予備含む)
  • ペットシーツ・マナーベルト
  • お気に入りのブランケットやおもちゃ
  • 粘着ローラー(抜け毛対策)
  • 常備薬・虫よけスプレー

移動時の注意点

車移動の場合は2時間おきの休憩が目安です。サービスエリアのドッグランを活用すると、愛犬のストレス軽減に効果的。電車利用の場合は、各鉄道会社の手回り品ルール(キャリーケースのサイズ制限等)を事前に確認しましょう。

シーズン選びのポイント

夏場はアスファルトの温度による肉球のやけどに注意が必要です。犬にとって快適なのは春(4〜5月)と秋(10〜11月)。紅葉シーズンの温泉旅行は、人も犬も最高のコンディションで楽しめます。冬場は雪遊びができるエリア(軽井沢、ニセコなど)も人気です。

まとめ:愛犬との旅は、宿選びで決まる

ペットと泊まれる宿は年々増加していますが、施設ごとに受け入れ条件や設備は大きく異なります。今回ご紹介した15施設は、いずれも実際に取材・宿泊して「愛犬も飼い主も心から寛げる」と感じた場所ばかりです。

施設選びの際は、愛犬のサイズや性格を第一に考え、ドッグラン、食事スタイル、温泉の有無など優先順位をつけて探すのがコツ。この記事の比較表を活用して、ぴったりの宿を見つけてください。

お子様連れでの旅行も検討されている方は、子連れにおすすめのホテル・旅館15選もぜひチェックしてみてくださいね。

そして施設経営者の方には、ペットフレンドリー化は単なるサービス追加ではなく、客単価向上・平日稼働率改善・差別化という三拍子そろった経営戦略であることをお伝えしたいと思います。需要はまだまだ供給を上回っています。いまこそ、ペットツーリズム市場への参入を検討してみてはいかがでしょうか。